数年前の話。


うろうろ街を彷徨ってたらさ、良い感じの廃ビル見つけたんだよ。


オフィス街にポツンとあって、なぜかドアに鍵掛かってなくてさ。
おー、ここ良い感じじゃね？って中に入って探検してみたのな。

昼間は人通り多くて誰も入らないからか、思ったほど荒れてなくてな。
ひと通り中を見て周って、最後に屋上に出たんだよ。


したらさ、居るんだよ。女が。
怒ったような顔でこっち見ながら、黙ってじーっと突っ立ってんだよ。


やべえ、出ちゃったよ！どうしよう！とか思ってテンパってるとさ、女が言うわけ。



「引き止めないで下さい！！」
「え、何？どういう事？」
「え…？止めに来たんじゃないんですか？」





まあ、早い話が自殺志願者だったわけだ。

恋人に大事な話があるって呼び出されて、プロポーズかと思ったらフラれたとか言うベタな話。
んで、衝動的に死のうと思って街をうろついてたらこのビル見つけたんだと。


そりゃ俺だって他人構ってる余裕なんか無かったけどさ、一生懸命言葉選んで引き止めたよ。
「失恋のショックなんかその内すぐ忘れるって」
「こんな事で死ぬのはもったいない」
「生きてれば『こんな事で死のうとしてたんだな』って馬鹿らしく思えるときが来る」
我ながら、ありきたりでチープな事ばっかり言ってたな。

「こんなもんが欲しいんだったら俺がやるよ」
とか言って、その時偶然持ってた指輪とか渡したりして。



そんで一晩中話してたら相手も白けちゃったのか、明け方に「とりあえず帰ろっか」ってなって、二人で朝マックして帰ったんだわ。




んで、連絡先も聞かずに別れたんだけどさ、やっぱ気になるじゃん？
つっても、その後どうなったかなんて知りようも無くて、1ヶ月くらいしてから、何となくそのビル行ったわけ。

んで、屋上行ったらさ、まあ、もちろんその女は居なかったんだけどね。
封筒が置いてあるのよ。風で飛ばないようにブロックで押さえてあって。

あー、やっちゃったのかな。もしかして遺書か？とか、嫌な考えが浮かんできたんだけどね。
中身見てみたら、俺があの時渡した指輪と小っちゃい手紙が入ってた。



「指輪返したかったけど、ここしか心当たりが無かったので…
毎日来てたけどあなたが来なかったので、届くかどうか分からないけど手紙にしました。
あの時はありがとうございました。凄く励まされました。」
大体こんな事が書いてあった。

ああ、思いとどまったのか。良かったなぁ。


何となくホッとして、屋上から指輪を思いっきり投げ捨てた。





















…あの日、付き合ってた彼女にプロポーズしようと思ってたんだよ。
高いレストラン予約して、無理して指輪買って。

さあ言うぞって時になって彼女に「他に好きな人が出来た」ってベタな話。
んで、衝動的に死のうと思って街をうろついてたらあのビルを見つけたんだ。


「失恋のショックなんかその内すぐ忘れるって」
「こんな事で死ぬのはもったいない」
「生きてれば『こんな事で死のうとしてたんだな』って馬鹿らしく思えるときが来る」
ありきたりでチープな事をその女に言いながら自分にも言い聞かせてな。


給料3か月分の指輪、彼女には渡せなかったけど。
給料3か月分で人間二人救えたんなら、まあ、悪い使い方じゃなかったのかな。
















随分前に取り壊された廃ビル跡に出来たレストランでそんな話を今の彼女にしたら、
「あー、それであの時励ましながらボロボロ泣いてたワケだｗｗ他人事じゃなかったんだねｗ」 だって。

俺、今度こそちゃんと指輪渡そうだ。







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こんにちは僕ぽち丸。

今日は以前の記事でも使った恋愛お題ったーと言うのを使ってみました。
名前を入力したらブログとかのお題を出してくれるすぐれもの。

で、出たお題がこちら。



だそうで。


「前回とパターン一緒じゃねえか」と言うのは是非気にしない方向で。

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