前回までのあらすじ
一度は失敗し、諦めかけたスカイフィッシュ捕獲。
しかし、京都の職人見習いの協力により、スカイフィッシュ捕獲専門器具・もごしを入手した。
最強の武器を携え、男は再び山へ登る…!
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ぽち丸は、再び地獄谷へ舞い戻った。
「やれるだけの事はやった。あとは結果を出すだけだ。前回はスカイフィッシュとの遭遇もすべて偶然に頼っていたが、今回は違う。捕らえるべくして捕らえる!」
自然と、足に力が入った。
前回挫折した、問題の滝。
もはや、敵ではなかった。
前回あれだけ不可能だと思われた岩壁に、良く見ると無数の手がかりがあった。
滝の上に出た。
しかし、道のりはまだはるか遠かった。
その後も、何度か同じような滝に出くわした。
段々と水の量は増え、足場は悪くなった。
「大丈夫だ、いざとなったら俺には五点着地がある!」
自分にそう言い聞かせ、道なき道を突き進んだ。
がむしゃらだった。ひたむきに登った。
そして、一度崖から落ちた。
良く考えると、下は岩だらけで足場が狭い。
五点着地など、できるはずも無かった。
はじめて、死を実感した。
しかし、背中に背負ったもごしが、クッションとなってぽち丸を守った。
「『何やってんだ、しっかりしろ』って、見習いさんが背中を押してくれた気がしたね」
恐れは、消えた。
ようやく沢を抜けると、密林だった。
木が鬱蒼と生い茂り、昼間でも薄暗かった。
足場はさほど悪くないが、木が入り組み、道が細い。
もごしが、邪魔だった。
「もうめんどくさいし、捨ててっちゃおうかと思いましたね。引っかかるたびにイライラしてました」
一度荷物をデポして、往復して少しずつ運んだ。
いつしか密林地帯を抜け、花崗岩の奇岩地帯に入っていた。
相変わらず足場は悪い。しかし、ここを抜ければスカイフィッシュ捕獲のベースキャンプにしようと考えていた目的地だった。
慎重に、足を運んだ。
やがて、ぽち丸の行く手に巨大な岩壁が立ち塞がった。
地獄谷で最大の難関。ここを超えなければ、ベースキャンプ予定地までたどり着けない。
密林地帯を抜けるのに手間取ったため、予定より大幅に遅れていた。この岩壁攻略に手間をかけていては、ここで夜を迎えてしまう。
時間との戦いだった。
命綱を持つバディもいない、多くの荷物を持ったままのソロクライム。
体力的にも、時間的にも、一発勝負だった。
登った。登りきった。
クライミングの経験が、活きた。
結局五点着地は使わなかったが、ぽち丸は満足だった。
今まで登ってきた道を振り返る。
感無量だった。
そして、反対側を見ると
神戸の町が、一望できた。
そして、この写真の中央左側に、期せずしてあるものが写り込んでいた。
スカイフィッシュだ…!!
最難関を突破したぽち丸を祝福するかのように姿を見せたスカイフィッシュ。
必ず捕獲できる。
願望が、確信に変わった。
この画像について、六甲山の生態に詳しい山岳家はこう語る。
「晩夏から初秋にかけては、赤とんぼがたくさん飛んでてハイキングにはとても良い季節ですね」
アーアー聞こえない。
周りを岩に囲まれた、とても狭い盆地。
ここが、ぽち丸がベースキャンプに選んだ場所だった。
日が暮れかかっている。急いでテントを張り、夕飯を作った。
食パンをバーナーで軽くあぶる。
ひっつかないように、オリーブオイルをひいた。
これに、目玉焼きを乗せる。
味付けはシンプルに、ダイショーアジシオコショーのみ。
いわゆる、ラピュタパンと呼ばれるキャンプ料理の代表格だった。
バーナーの火力が強く、外での料理でフライパン以外の温度が低いせいか、卵はフライパンに引っ付くわ上は半熟どころか完全に生だわ、物凄く見た目がアレになった。
パズーはマジで料理上手いと、尊敬の念を覚えた。
食べようとしたら、さらに酷くなった。
しかし、味だけはガチだった。
やがて陽も暮れ、夜が訪れた。
いよいよここからが本番。もごしを荷物からほどき、準備を整える。
さあ、勝負だ・・・!
高鳴る鼓動を抑えながら、いよいよスカイフィッシュ捕獲作戦の本番がスタートした。
(続く)
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