こんにちは僕ぽち丸。
今日のは珍しく長くて真面目。
ずーっと以前。そろそろ1年ほどになろうかと言うほど前なんですけども、このブログを開設して1ヶ月ほど経ったあの日。
東日本大震災が発生しました。
んで、僕はと言うと
こんな記事を書いて、震災直後から主にtwitter上で流れたデマを検証する記事を更新し続けました。
それでまあ、当時同じく検証作業をされていた荻上チキ氏から先日インタビューを受けまして、その本が出版されたと言うわけです。
ちなみにその本がコチラ。
『IT時代の震災と核被害』
献本いただいたのがつい先日なものでまだ荻上チキ氏が編集された項しか読んでいませんが、今回の東日本大震災及び福島原発で浮き彫りになったIT・ソーシャルメディアの功罪であったり、汎用性や危険性であったり、そんでもって、今後の災害に今回得たものをどう活かして行くのか?と言う、普段モテたいだのチンギスハンだのと、箸にも棒にも掛からないような戯言ばっかり書いてる僕のインタビューとかマジで載せて良いのかよって感じの重要かつ有用な本です。
いやマジこれ、どっかの大学の社会学の講義とかで教科書になるんじゃねーかな。
僕がインタビューのお話を頂いたのは、確か3ヶ月くらい前だったでしょうか。
ブログに設置してるメールフォームから、「インプレスから『ITと震災』と言う本が出るんですけど、その企画で東日本大震災の時にデマを検証していた人たちにインタビューしてるので良かったら協力してください」と言う旨のメールが届きました。いやもちろんもっと丁寧な書き方でしたけどね。
インタビューですよインタビュー。取材される方ですよ。何かまるで有名人みたいじゃないですか。
そりゃもう、普段からブログ書籍化したいとか夢みたいな事言ってる僕ですからね、他人の夢食って生きてるバクみたいな人が騙しにきたんじゃ無いかと思いましたよ。
インタビューされる側なのに何故か取材費払わされるんじゃねえかとか、実はインプレスじゃなくてイソプレスなんじゃねえかとか色々疑いましたけども、どうやら本当らしいって事で喜んでお受けしました。
インタビュワーの荻上チキ氏と言う方、メディア評論家としてご活躍される、まあ何て言うのか、俗に言う有名人クラスタに属する方です。
震災時には
ご自身のブログで震災デマの検証作業をしておられたのですが、プロだけあってかなり精度が高く、それでいてメディア人ですので影響力もあり、まあ正直言って同じ「検証屋」として僕と同列に語るのは非常におこがましいんですけどもね。
と言うわけでインタビューを受けたんですけども、もう何か大学の授業より断然面白かったです。
僕みたいなど素人に用語などを解説しながらのインタビューは凄く疲れたと思います。ありがとうございました。
そんでまあ、最初に書いたとおり献本いただきまして、さっそく読んでみたんですけども。
他にデマ検証屋をされてた方のインタビューも載ってましてね、それと比べると、僕のインタビューのなんと薄っぺらい事かw
もうね、完全にアホの子ですアホの子。もっと勉強しとけばよかった恥ずかしい。
という訳でまあ、今日はインタビューでは語りきれなかった部分を書いてみようかと思います。
あの日。
僕は仕事をしていて、何だか建物が揺れているのに気付きました。
震度は体感で1かそれ以下。特に避難とかもせず、そのまま仕事を続けてたんですがね。
上司が、「東北がエライ事になってる!」と言ってから、状況が一変しました。
上司が携帯でワンセグをつなぎ、職場のほぼ全員で見てみると、テロップに流れる「震度6強」(当時)の文字。
お台場が燃えてる様子が映し出されてました。
すぐに東北・関東方面のお客さんに電話しますが、当然のように不通。
電話しながらtwitterを見て、「地震」で検索すると出るわ出るわ、1秒ごとにTLが更新されていきました。
そんな中、ふと目にしたのが「これって東海地震が誘発されるんじゃないか?」と言うツイート。
東海地震の可能性については、以前から専門家が指摘してると言う覚えがあったので、薄ら寒くなりました。
しかし、とりあえずは仕事。東北方面へは依然として連絡不通でしたが、関東方面とは何とか連絡がつき、少し安心しました。
それでまあ、今後の納品スケジュールを調整する為に被害状況を把握しようと、気象庁やtwitterに張り付いて情報を集めてたんです。
「【拡散希望】宮城県沿岸部全域に津波警報発令。緊急に拡散してください。お住まいの方はすぐ高台に避難を」
「津波なう」
「やばい、やばい」
「余震きた」
「家 が 流 さ れ て る」
臨場感が半端じゃなかった。最初にテレビを見て「震度6強」って見てたもんで、少なくとも阪神より酷い事になるとは思っても無かったです。
この時、数時間前に見た東海地震のツイートがこう変化していました。
「【緊急拡散】東海地方のプレートが縮んでいると観測された。専門家が24時間以内に東海地震が誘発されると発表。東海地方は地震に備えて下さい」
このツイートが妙に引っかかりました。
数時間前に見たときは「東海地震が誘発するんじゃないの?」と言うただの危惧だったはず。
そして、地震の正確な予知は現代の技術では不可能だ。もし出来るなら、そもそも今回の地震が予測されてなきゃおかしい。
そして何より、僕が阪神大震災を被災したとき、「もっと大きな地震の前触れだ」と言うデマが流れてた。
専門家が発表したというなら必ずソースがあるはずだし、探すか。
そう思って検索してみると、気象庁のHPが引っかかりました。
「今回の地震は東海地方のプレートに直接影響せず」
やっぱりな、と言うのが素直な感想。
口コミに尾ひれがついて流言として成立する瞬間を見たわけです。
すぐにブログを書きました。
最初はデマの検証なんかをやる記事ではなく、確か「東海地震は誘発されません」と言うようなタイトルで、「東海地震誘発との噂が流れてますが、デマです」と言う簡単な文章と一緒に気象庁の発表ページを貼り付けるだけと言うもの。
すると、わずか2時間ほどでそれまでの1日あたりの平均アクセス数の倍以上のPVがありました。
アクセス解析を見てみると、「地震 デマ」「東海地震 誘発」などなど、ほとんどが地震に関するもの。
その中でも、「地震 デマ」と言うワードがブッチギリで多かったです。
その当時googleで検索してみると、「地震 デマ」で僕のブログが最初にヒットしたんです。
多分これからも、このワードで検索して来る人は多いでしょう。
災害時の情報の錯綜が、ある意味では直接的な一次・二次災害より恐ろしいと言う事を僕は阪神の時に身を持って体験しています。
地震に関するデマを求めて検索した人が、最初に見たページで判別できれば、ほんの少しくらいは情報の錯綜を抑えることができるかもしれない。
そう思って、デマの検証を始めたわけです。
(もちろん、普段よりアクセス増えたぜヒャッハァwwwって気持ちが無かった事は無いですが)
「地震 デマ」などのワードで検索すると、ブログのトップではなく東海地震のエントリに直接アクセスする人が多かったので、新しいエントリは書かずに東海地震のものを編集しなおしました。
検証作業を始めた当初はそれほど難しくは無く、正直言って僕じゃなくても少し調べれば簡単に否定できるものばかりでした。
11日の金曜日、12日土曜日、13日日曜日の3日は、多分睡眠時間合計して2時間程度だったと思います。
UstreamでNHKを視聴しながらtwitter、mixi、2ちゃんねるをハシゴして回り、「デマ」や「ソース」、「拡散」と言うワードを検索してデマの可能性がある情報をサルベージ。緊急性が高いものや多くの人が言及しているものを優先的に検証しました。
特にtwitterは、検索欄に「デマ」と入力しておくと、「デマ」と言う文字列が入っているつぶやきを自動で取得して更新してくれるので非常に助かった覚えがあります。
デマの検証はもちろん、ユーザビリティを考えてただだらだらと羅列しているだけだったレイアウトをあらためたり、
出来るだけ主観を排除するような書き方に変えてみたり。とにかく時間勝負だったので、手を動かしながら考えてました。
そして、時間が経つにつれ、同じようにデマを否定・検証するブログやサイトなどがぽつぽつ現れはじめました(僕が見つけるのが遅かっただけかもしれません)。
情報の伝達経路と言うのは、多ければ多いほど混乱を招きます。
平時ならば多様な情報がある分、いわゆる「片手落ち」を防げる為に情報の伝達経路は多い方が良いと思いますが、今回のような災害時にいたっては、伝達経路が多いとかえって混乱を招くんじゃないかと思いました。
例えば、これは実際に起こった出来事ですが、
デマ検証サイトAでは「被災地の災害対策本部が水・毛布・タオル・カイロなど直接的な支援物資を必要としている」
デマ検証サイトBでは「保管場所や仕分人員などのリソースが確保できない為、直接的な物資支援は募集していない」
と言う相反する情報が流れていた事がありました。
これは、サイトBが検証した時点ではリソース不足だったが、サイトAが検証した時点では支援物資の受け入れ準備が整ってたと言うタイムラグによって発生した事です。
荻上チキ氏も著書で触れていますが、情報には賞味期限があり、緊急性の高い情報ほど鮮度が落ちるのが速い傾向にあります。
デマの検証サイトと言うのは、「流言を否定し、現時点での正確な情報を提示する」と言うのが目的であり存在意義ですので、検証した結果を定期的にチェックしておかないと、今度はその検証サイトがデマの発生源になりかねません。
デマかどうかを知りたいのに、その検証サイトの信憑性が分からない。こんな事態が実際に起きていたんですね。
そして、サイトAとBの検証結果のどちらが現時点で正しいかを検証しようにも、素人の僕が自衛隊や自治体の災害対策本部に直接電話するわけにも行きません。
ちゃんとした報道屋による取材でそれなりの訴求力があるならともかく、電話回線や現地の人の電話応対といったリソースを僕のような素人のために割くわけにはいきませんからね。
3月11日、12日、13日は金土日だったため、僕もネットに張り付いて検証や更新作業を行えてましたが、平日は当然僕も仕事をしなければならないので、それほど頻繁に更新できなくなります。
その間に、僕が検証を行ったデマが覆るかもしれない。情報の鮮度が落ちるかもしれない。
震災発生から時間が経つにつれてデマと思われる噂の内容も多様化・複雑化し、検証するには専門知識や文献や本格的な取材が必要になりそうなものが増え、僕自身の検証能力の問題、または検証・更新作業に使える時間的リソースなどの面から、次第に素人ゆえの限界を感じ始めました。
それに、個人のブログでやってる以上、いつまでもデマの検証だけをするわけにも行きません。
段々とどこで区切りをつけるのか、自分で検証し続けられる範囲はどこまでなのか、落としどころを意識するようになりました。
そして「デマの検証情報を一元化したほうが良い」と言う考えにたどり着いたわけです。
同じようにブログなどでデマのまとめを行っており、出来ればジャーナリズムに関わりがある人。(つまり、僕より取材の方法や検証の精度に優れていて、社会的に影響力がある人)
そこに僕が誘導し、情報の発信を一元化すべきなんじゃないかと。そして僕は裏方で検証作業を手伝うと言う形にしようと思いました。
そこで、荻上チキ氏にメールでコンタクトを取り、相談させていただきました。
返って来た返答は、
「デマの検証は複数人で精査したほうが良いと思います。一元化するよりも情報を求める人に対して届きやすいし、デマの検証サイトとして一極化したサイトが誤情報を流すと大変な事になります。それよりも、検証サイト同士がリンクなりで横の繋がりを持ち、それぞれで補完し合う方が良いかと思います。」
だいたいこんな感じのものでした。
なるほど。それもそうだ。
と言うわけで、記事の鮮度を測る目安として最初に最後に更新した時間を書くようにし、「被災者の身体生命に関わるような緊急性のある情報以外のもの(例えば、米軍空母が入港する際日本語で人文字を作っていた、オバマ大統領の演説がかっこよかった等)は扱わない」と言う自分ルールを定めて更新作業を続行しました。
やがて、だんだんと緊急を要するものは少なくなり、それにともなって僕はデマ情報の更新を止めました。
以上が震災発生後のざっとした流れです。
デマをまとめる中で、非常にたくさんの方からコメントやメールをいただきました。
また、ご自身のmixiやtwitter、facebook、果てはニコ動や2ちゃんねる、ご自身のブログ・サイトなどで拡散してくれた人も多く居ました。
そして、そのほとんどで好意的な意見をいただいていました。本当にありがたいことです。
しかし、批判や否定も数多くありました。
「阪神大震災当時にレイプが増加した。被災地の女性は注意」と言うもの。
これを否定したところ、何か知りませんがフェミニストなんだろうか、とあるNPOの方々から凄い勢いでtwitterでぶっ叩かれました。
世界的に見て災害後は性犯罪が増加する傾向にあるだのレイプを助長してるだのなんだの、阪神被災者をどうしても性犯罪者集団にしたい人たちから人非人みたいな扱い受けちゃいましてねぇ。
レイプを助長した覚えは一切ありませんし、世界的な傾向ではなく阪神大震災時に被災地で性犯罪が増加したと言う客観的データを出せよって話なんですが。
結局最後まで、捏造だと証明されているウィメンズネットこうべが出したもの以外の数値的根拠を示す人は現れませんでした。
どうしても阪神被災者をレイプ集団にしたい人たちは、「ウィメンズネットこうべの報告は捏造であると言う証拠が捏造であることを証明する」か、「ウィメンズネットこうべの報告以外の客観的証拠を提示する」かのどちらかしかないよ。
まあ、この話をしだすとまためんどくさいのが沸いて来そうなのでここまで。
何が言いたいかつーと、必ずしも褒めてくれる人ばかりではないという事。
そして、作業しながら、常に不安が付きまとっていました。
僕がやっている事は被災地・被災者にとって何の役に立つんだろうか?被災地ではもちろんネットなんか見れる状況のわけが無い。
携帯があるとは言え、充電もままならない状況で僕のブログを見る余裕があるとは思えない。
被災地域以外の人にしたって、果たして何人がこのブログ見るんだろう。
主にtwitter、mixiなどのソーシャルメディアで拡散され続けるデマの勢いを、こんな普段からPV少なすぎる個人ブログでほんのわずかでも緩める効力があるのだろうか。
それに、僕は報道のプロでも災害や原子力などの専門家でもない。
僕がたかだかネットに転がってるソースだけで検証した結果に、一体どれだけ信憑性があるのか。
もちろんソース自体は公的機関や専門の研究機関など、出所のはっきりしたものしか提示してないけれど、それでも素人の検証には限界がある。プロに任せるべきなんじゃないのか。
何かの役に立ちたい気持ちはある。阪神のときは、東北の人たちも多大な支援をしてくれた。僕は率先して支援すべき立場であるのは間違いない。
でも、統制の取れないボランティアは無意味を通り越して有害でしかないこともよく分かっている。
僕のアプローチは間違ってるんじゃないか。残るのは自己満足のみで、素直に募金だけしといた方がよほどマシなんじゃないのか。
震災直後にネットの至るところで沸いていた、折鶴やpixivの復興祈念絵や震災ソングやmixiの「手を繋ごうプロジェクト」みたいな、スラックティビズムになってやしないだろうか。
阪神の教訓はもちろんある。もちろんあるが、それは震災後のフォーラムなどに参加したことも無い、つまり「阪神大震災の被災者としてのコンセンサスが取れていない、ただの僕の主観」でしかない。果たしてこれに基づいた情報発信にどれだけの価値があるのか。
「自分の役目」と言うものをどこに設定するかで常に悩み、被災地・被災者にとって不安を増徴させる事実にはあえて触れないほうが良いのか、事実は事実として伝えるべきなのか。
検証作業をしている間ずっと、そして、今になってもぐるぐると頭を回っている疑問です。
「ボランティアがそれ自体として素晴らしいわけではないように、検証屋もそれ自体として誇れるようなものではない。どの程度の精度で検証作業を努め、どの程度の人たちにそれを届けられたかで判断しなくてはならない。」(『IT時代の震災と核被害』より抜粋)
日本に住む以上、震災と言うのは残念ながら避け得ないものです。
その際に、ITと言う方面からどのような復興支援を行えるのか?本書がその指針のひとつとなるのは間違いありません。
そして、企業・団体としてではなく個人として、IT・ソーシャルメディアを通じて何が出来るか?
と言うひとつのケースとして、僕のブログが本書の何十分の一、何百分の一でもお役に立てると幸いであります。
と言うわけで、みなさん買ってねw
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