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こんにちは僕ぽち丸。

気付いたら早いもので、もう10月も終わりですね。


秋です。秋真っ盛りです。そろそろ紅葉とかはじまっちゃったりして、秋が本気出し始める今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。



今日はちょっと、この秋について語りたい。ぶっちゃければ、一言物申したい。
はっきり言いますけれど、僕はこの秋という季節が嫌いです。何と言うかこう、大して仕事できないくせに重要なポストについてる無能役員みたいな、そんな苛立ちを感じずにはいられません。




秋と言えば、色々と定冠詞がつきますよね。
「食欲の秋」「運動の秋」「芸術の秋」「読書の秋」などなど。
しかしながらね、他の季節にはしっくり来る定冠詞ってほとんど無いわけですよ。何かありますか。正直、「キンチョーの夏」くらいしか思いつきませんよ。

そのくせ秋は4つ。ぱっと思いつくだけで4つも。なんてがめついんでしょうかこの子ったら。


大体ね、他の季節って、パっと思いつくイベントあるじゃないですか。

春といえば花見だったり、新学期や新生活と言った環境が一新するイメージですよね。
夏は海や花火、お祭りなんかあります。
冬はクリスマスや新年などなど、師匠も走り回るぐらい盛りだくさんなわけですよ。

そんな中で、例えば春は出会いの季節とか言われるとまあ、新生活が始まっていろいろな人と出会うんだな、って感じで納得できるわけですよね。つまり、何かイメージしやすいイベントと言う裏付けがあるわけでして。


それで、秋ですよ秋。
何なんですか秋って。何もイベント無いくせに何でこんなやたらと「~~の秋」って騒いでるんですかあなた達は。恥ずかしいと思わないんですか。


まあね、秋と言えば日本人の根源である米を始め、様々な農作物の収穫時期であり、冬眠前の動物が越冬準備を始めるために里に降りてきたり、食料を確保しにくい冬に向けて保存食を作り始めたり、まあそんな感じなので、「実りの秋」や「食欲の秋」と言うのはまだ分からんでも無いんです。


しかし、「運動」「芸術」「読書」テメーらはダメだ。
何もそれを裏付けるイベントが無い。

運動はまだ、学生たちは体育祭があったり、体育の日なんつーもんもあるんですけれど、実はこれって東京オリンピックが開催された日にちなんでるだけですからね。とっくに終わって、当時を知ってる人より知らない人の方が多くなってきた昨今、それを裏付けにするのは少々無茶が過ぎるってもんですよ。恒常的なイベントや季節時候が背景と言うわけでは全然無い。まるで戦争が終わって何度も何度も賠償や謝罪をしたにも拘らず未だにごちゃごちゃ言ってる人たちみたいじゃないですか。これでは認めるわけにはいきません。



そして何よりも問題なのは、裏付けに足るイベントごとなどが何も無いにも拘らずですよ?
「運動」→鍛錬
「読書」「芸術」→教養
「食欲」→健康
ってさ、もう立派な人間形成をするには秋が一番、むしろ秋意外必要ないぐらいの勢いでアピールしてるじゃないですか。もうお前ら秋だけ過ごしてればうまい事生きていけるんだよみたいな。

中道主義の僕としては、ぶっちゃけ何の取柄もない秋だけがこんなにフューチャーされるのが納得行かないのです。どれだけ厚かましいんだ秋。
運動だの読書で夜更かしだのしてる暇があるならさっさと寝て早く起きて稲を刈れ稲を。


いやもうほんと、芸術にいそしむのであれば、枯葉だのなんだので全体的に茶色っぽい秋よりも生命の喜び溢れ様々な色がこの世に生まれる春の方が向いてるし、運動するなら汗をかく事すら清清しい夏の方が、読書するなら寒くて外を出歩くのが困難な冬の方が向いてるってもんです。


どうですか。
何か知りませんが妻が死ぬ予知夢を見た挙句、秋の甘言に乗ってジェダイを殺害し、その後は坂を転がるようにクローントルーパーを率いてジェダイ聖堂を襲ってかつての師匠オビワンにも妻にも見放され、その後は完全に暗黒面に堕ちて秋の意のままに操られたとか、さもなくば元は普通のサラリーマンだったのにある日妻と子供を秋に無残に殺害され、それ以来秋への復讐を誓って仙人の下で修行に明け暮れ、秋に潰された右目に紫水晶を埋め込んで呪符やなんやを駆使して妖退治の旅をしながら秋を探しているとか、そんな裏設定があるんじゃないかってくらい一生懸命秋に対して憎しみを向けてる感じですけれども、秋がどれだけ肩書きばかり立派な有名無実の季節であるかと言う事がお分かりいただけたでしょうか。秋なんてろくなもんじゃない。


とは言え、なぜ僕がこれほどまで春夏秋冬のうち秋だけに固執して、下手したら工場に放火したりオリンピックでプラカードを掲げて出場停止処分にされそうなぐらいキチガイじみたバッシングを展開しているのか。

ここまで強迫観念めいた憎悪となると、これはもうトラウマだかなんだか、そういったメンタリティ的な原因があるような気がしてきます。





あれは、僕が幼稚園児の頃でした。
今でこそレスラーみたいな体型でむっちり豊満なナイスバディを持つこの僕ですが、当時は外で遊びまわるよりも室内で静かに本を読んでいることを好む、内気な少年でした。
誰に言っても信じてもらえませんがこれマジだからね。


ところが、両親はそんなひ弱な僕を心配したのか、元気に走り回る子供らしい子供になって欲しかったのか分かりませんが、とにかく外で遊ばせようと色々努力しておったわけですわ。


幼稚園とか小学生の頃って、真冬でも短パンとランニングの男の子って居たと思うんです。
僕はさすがに真冬までは強要されなかったものの、深秋までずっと短パンとランニング略して短ニングを着せられてたんですよね。

ところがもう、僕はといえばさっきも書いたとおり男の子とドッジボールするより女の子と室内でおままごとしてる方が好きな草食系男子でしたので、体ガリッガリのもやしっ子だったわけですよ。
それなのに短ニングなもんだから、そりゃもう秋の寒さから身を守る術が無いんですよねマジで。

自由時間はまだ室内に居ればいいんですけど、運動とか散歩の時間とかって外に出ざるを得ない時間があるんです。それがもう苦痛でしょうがない。

ガッチガチ震えながら「俺もうこのまま短ニングだったら死んじゃうよぉ!」とか思いまして、幼いながらも知恵を振り絞って色々と策を講じました。
思い出せる限りだと、運動場の隅の用具入れに隠れたり、落ち葉を拾い集めて布団みたいに中に潜り込んだりしてたんですが、その度に怒られ、また心配されました。

当時の僕は熱中症なんて言葉は知りませんが凍死と言う死に方は知っており、「暑くて死ぬ事は無いけど寒すぎたら死んじゃう!」と真剣に思ってましたので、そりゃもう死活問題だったわけですよ。

その結果、用具入れに隠れたまま寝ちゃって晩の8時ごろに目覚めて出て行ったら神隠し扱いされてて大騒ぎになってたとか、落ち葉の布団に潜り込んだは良いけど全く寒さを凌げなかった上に、奇行に走ったと思われたらしくて色んな大人にやたらといじめられてない?とか聞かれたんですけど、まあそれは今は関係ないのでおいといて。


ある日ね、相変わらず寒いし、短ニングだし、寒さを凌ごうと色々とやってみても全部裏目に出て怒られるし、相変わらずもやしだし、大人は「子供は風の子」とか意味分からない事言うし、運動すれば暑くなるとか言うけど走ったら風が来るじゃんバカなの?死ぬの?つかそもそも俺はとーちゃんとかーちゃんの子であって風の子じゃねえよボケ!とかこの世の理不尽を呪って、とうとう泣き出しちゃったんですよ。

寒い、ただひたすら寒い。
先生だって友達だってトレーナーの上にジャンパーとか着てる。なのに僕は短ニング。なにこれ。
そんなこんながどうしようもなく悲しくなって、ただひたすら泣いてたんですね。


「どうしたの?」
と声を掛けてくれた人が居ました。
名前は知らないけれど、多分年長組みの女の子。
「寒いのー!!」と泣く僕をよしよしと慰め、自分がつけていたマフラーを首にかけてくれました。


「寒くなくなるまで貸してあげる!」
そう優しく微笑んだ彼女は、僕にとっては女神様のように見えました。
ぶっちゃけ、首元だけ暖かくなったところで相変わらず短ニングですから、相変わらず寒い事は寒かったんですけれど、何故か泣き止んでしまいましてね。


多分、心が暖まったからだと思います。


結局、その子の方がお迎えが早くて、マフラーを借りっぱなしで帰ってしまいました。
そして翌日、マフラーを返すために彼女を探しましたが、どれだけ探しても彼女は見つかりませんでした。

その翌日も、その翌日も、彼女は居ません。
僕はマフラーを返せず、どうして良いか分からなくてまた泣きました。
マフラーを返したい。それ以上に、あの子に会いたい。話がしたい。

当時は自覚していなかったものの、今思えばこれが僕の初恋だったのかもしれません。


泣いていると先生が話しを聞いてくれました。
名前も知らない彼女の事を一生懸命説明し、マフラーを返したいと泣きながら訴えました。
泣きじゃくる幼稚園児の、全く要領を得なかったであろう説明を丁寧に聞いた先生は、あの子の名前を教えてくれました。



「その女の子はね、のぞみちゃんって言うの。でものぞみちゃんは3日前から風邪でお休みしてるよ」



のぞみちゃんが風邪を引いた。
きっとそれは僕にマフラーを貸しちゃったからだ。
その事実が、この世の何よりも悲しくて、僕は更に泣きました。


僕のせいだ。僕のせいだ。僕のせいだ。


自分のせいで他人が、それも好きになった女の子が病気になったと言う事実は、幼稚園児にとって大きすぎる罪悪感を植えつけるのに充分でした。


お父さんやお母さんに言ったらきっと怒られる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
のぞみちゃんごめんなさい。会って謝りたい。僕が代わりに風邪を引きたい。


黙っている事に耐え切れなくなった僕は、祖父にこの事を話しました。
祖父は静かにうなずきながら僕の話を聞き、全て話し終わった後に優しく言いました。


「ぽち丸は、のぞみちゃんが好きなのかい?」
「うん…」
「のぞみちゃんが寒がっていて、ぽち丸が暖かい服を着ていたら、ぽち丸はどうするかい?」
「服貸してあげる…」
「それでぽち丸が風邪を引いたら、のぞみちゃんのせいだって怒る?」
「んーん。のぞみちゃんが風邪引かなくてよかったって思う」
「きっと、のぞみちゃんもそう思っているよ」

祖父は優しく微笑むと、カバンから袋を取り出しました。


「悲しくなくなるお薬だよ。ひとつは今食べなさい。もうひとつは、のぞみちゃんが元気になったときにマフラーを返すときにあげなさい」

そう言って、飴をふた粒くれたのです。


それは甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディをもらえる私はきっと特別な存在なのだと感じました。

今では私がおじいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼もまた、特別な存在だからです。





なんて事は一切ないのですが、何故か秋が嫌いなんです。
僕がなんでこんなに秋が嫌いなのか誰か教えてください。あと孫の前に息子、の前に嫁ください。



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