10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
僕は携帯電話。
いろんな機能がついてる最新機種さ!
・・・去年の。
でも、最初はぎこちなかったご主人様も、今では僕を使い慣れてとっても良い感じなんだ!
僕はいつも、決まった時間にご主人様を起こす。
ご主人様が気持ちよく起きれるように、お気に入りの着メロを鳴らしてあげるんだ。
でも、僕が起こすのは平日だけ。休みの日はご主人様をいっぱい寝かせてあげる。
僕にはそんな機能もついてるんだ。
僕とご主人様はとっても仲良し。ご主人様はどこへ行くにも僕を連れて行ってくれる。
ご主人様は、いろんな場所で僕を使って写真を撮る。
きれいな風景や面白い看板、おいしそうな料理・・・僕はたくさんの写真を覚えている。
ご主人様には、最近彼女ができた。
彼女からのメールを見ているご主人様は、ニコニコととっても優しい顔をしている。
だから僕は彼女さんからのメールをがんばって受信する。
きっと、彼女さんもご主人様のメールを見る時はニコニコしているんだろう。
だから僕は彼女さんへのメールをがんばって送信する。
もちろん、ご主人様はデートの時も僕を連れて行く。そして、二人で写真を見てニコニコしている。
その時のご主人様の顔は、メールをしている時よりも嬉しそうだ。
僕はご主人様が大好きだ。ご主人様が嬉しいと僕も嬉しい。
だから、ご主人様を嬉しくさせる彼女さんも大好きなんだ。
でも、ご主人様は結構乱雑で大雑把だ。僕はよく落とされる。
画面と本体をつないでいる折りたたみの関節の部分は割れてしまっているし、電池のフタはすぐ外れるようになってしまった。
でも、ご主人様は落とした後、とっても心配してくれる。
だから僕は、ご主人様の友達の電話番号や、彼女さんから来た保護メールや、二人が笑顔になった写真を、落としたショックで忘れないようにがんばるんだ。
正直言って落とされるのは嫌だ。でも、ご主人様の悲しい顔を見るのはもっと嫌なんだ。
割れたところとすぐ外れる電池のフタはご主人様が接着剤で修理してくれた。電池だって長い時間もつ。
僕はまだまだがんばれる。
ある日、ご主人様は彼女さんとデートをした。もちろん僕も一緒だ。
今日はどこへ行くのかな。
そう思っていると、見覚えのある場所に来た。僕がご主人様のところへ来る前に居た、携帯電話のお店だ。
ご主人様は店員さんと何か話している。 ご主人様が僕を持ち上げ、割れている所と電池のフタを店員さんに見せた。
そうか、きっとご主人様は僕を修理してくれるんだ!そう言えば、僕がご主人様のところへ来て、今日でちょうど1年だ。
ありがとうご主人様。これからも、ずーっと一緒にいようね!
家に帰ってきた。ご主人様は、僕を修理してくれなかった。
今、ご主人様は僕の変わりに新しい携帯電話をいじっている。最近発売された正真正銘の最新機種。言ってみれば僕の弟だ。
僕たちには、電池の裏にICカードというものを入れる場所がある。 このICカードがないと、電話やメール、Webなどの機能が使えない。
今、ICカードは弟に入っている。
ご主人様が接着剤でつけた電池のフタは、マイナスドライバーでこじ開けられた。
電池のフタは、いびつに歪んで割れた。
もう元には戻らない。
ご主人様は、これから僕を外へ連れて行く気は無いようだ。
・・・そっか、僕の役目はもう終わったんだね。
今までありがとう、ご主人様。 弟をよろしく。できたら、落とさないように丁寧に扱ってあげてください。
ご主人様と過ごせて、僕は幸せでした。
今まで本当にありがとう。そして、さようなら
・・・次の日、僕はいつもの癖でご主人様を起こす時間に目が覚めた。
電源は切られても、アラームをセットした時間になると勝手に電源が入る。僕にはそういう機能もついている。
きっとご主人様は、僕にセットしたアラームを解除し忘れたんだ。
でも、ご主人様を起こすのはもう僕の役目じゃない。
ところが、弟はいつまでたってもご主人様を起こす気配が無かった。
そうか、ご主人様、弟にアラームをセットするのを忘れたんだな。
それじゃあ、今日だけはかわりに僕が起こそう。
起きて下さい、ご主人様。朝ですよ。今日はお仕事の日です!早く起きて顔を洗わないと、まためざまし占い見逃しちゃいますよ!
おはようございます、ご主人様。眠そうですね。朝に弱いのは僕がここに来たときから変わってませんね。
これが、僕の最後の仕事です。
明日からは弟が起こしますから、ちゃんとアラームをセットしてくださいね。
ご主人様、今まで本当にありがとうございました。気をつけてお仕事いってらっしゃい。今日から会社には弟を連れて行ってくださいね。
それじゃあ、
今度こそ、
本当に、
さようなら・・・
・・・やあ、僕だよ。携帯電話さ! 実は、僕にはまだ電源が入っている。
あの後、ご主人様は僕を充電スタンドに立てて、枕元においた。
弟にはアラームはセットしていないみたいだ。
電池のフタが無い僕は、もう以前のように外に連れて行ってはもらえないけれど、ご主人様はふたつだけ僕に仕事を残してくれた。
ひとつは、仕事のある日にご主人様を起こすこと。
なぜ弟じゃなく、僕にこの役目を残してくれたのか分からない。
でも、僕はいつも決まった時間に、お気に入りの着メロでご主人様を起こす。
そしてもうひとつは、僕が覚えている彼女さんから来た大事な保護メールを時々ご主人様に見せること。
電話帳や写真のデータは弟にもコピーしたみたいだけれど、メールフォルダの中身は移せなかったみたいだ。
今、彼女さんからのメールを見ているご主人様の顔は、前みたいに、とっても嬉しそうに、ニコニコと優しく微笑んでいた・・・