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昔、近所に幼馴染の子が居た。
カワイかったような気もするけど、どっちかっつーと家族とか姉妹みたいな感じだったから、別に女として意識した事なんて無かった。
学校一緒に登校してたんだけどさ、他の男子に茶化されるから、いつからか恥ずかしくなって時間ずらしたりしたよ。
それでもそいつ、バカ正直に毎朝ウチまで迎えに来てさ。
俺もバカガキだったから「いーよ、来るなよ!」とか言ってたら、そしつすげー寂しそうに一人で学校行くのよ。
それでも時々、うちに晩飯食いに来たり、ウチの親が居ない時は飯食いに行ったりしてた。
何でか気まずくて、ほとんど口聞いてなかったんだけど。
小5の夏休みの自由研究で、俺んちの庭で星座の観察やったんだ。
俺、天体望遠鏡持ってなかったからさ、借りたんだよ、そいつに。学研の少年用のやつ。
今となっちゃショボいつくりなんだけど、当時はすげーカッコ良くてさ。
そいつの家、結構裕福で色んなもの持っててさ。正直言って羨ましかった。
で、その後毎日うちに来ては自由研究のまとめとかも手伝ってくれて、最終的には俺のじゃなくてそいつの自由研究みたいになってた。
「お前は自由研究しないで良いの?」って聞いたら、何か曖昧な返事でさ。
変だなーと思ってたら、夏休み明ける少し前に、両親と揃って挨拶しに来たのよ。
親の仕事の関係でイギリスに引っ越すんだってさ。
ほんと突然だった。びっくりしたよ。そんな事一言も言わなかった。
「お前、持って帰るの重いって俺んちに置いてる天体望遠鏡どーすんの?」って聞いたら、「あげる」だって。
羨ましいと思ってたから、超うれしかった。
ホント、そいつがイギリス行くのとかは結構「あ、そうなんだふーん」くらいの冷めた感じだったのに、現金なバカガキだったな。
居なくなってしばらくして、はじめてそいつの事好きだったのに気付いた。
今までずっと、近すぎて気付いてなかったんだよ。本当にバカガキだよな。
泣いたよ。超泣いた。
何でもっと早く気付かなかったんだろうって。
もし気付いてたとしても、きっと親の仕事の都合なんてどうにかなるわけ無いのにな。
もし気付いてたとしたら、きっと別れの時もっと辛くなってただけなんだろうけどな。
泣きながらそいつがくれた天体望遠鏡見ても、涙でにじんで星なんて見えなかった。
多分、天体望遠鏡さ、最初から俺にくれるつもりだったんだろうな。
それに気付いてまた泣いて。
それから、俺は暇さえあれば星を見てた。
この星、イギリスからも見えてるのかな。あいつ、見てるかな。
イギリスの住所なんて聞いてなかった。
あいつからも手紙が来る事はなかった。
もしかしたら、あいつにとっては俺はただのご近所さんの幼馴染で、天体望遠鏡くれたのも、重いから持っていけないし捨てるのも勿体無いしって感じだったのかもな。
でも、俺にとっては、あいつに貰った天体望遠鏡と、星空が、あいつと俺をつなぐ唯一のものだった。
そのまま俺の趣味は天体観測になって、自分でバイトした金でもっと良い天体望遠鏡を買ったんだけどさ。
あいつに貰った天体望遠鏡は、バカガキだった俺の初恋の思い出として、今でも大事に部屋に飾ってある。
で、先日。
結婚が決まって、新居に持っていく荷物をまとめてた時にさ。
もちろんあいつから貰った天体望遠鏡も持って行こうと思って、箱にしまったんだ。
そしたら、箱の中から手紙が出てきてさ。
「さようなら、大好き。私絶対に帰ってくるから、大人になったら結婚しようね」
あと、イギリスの住所が書いてあった。
いつの間に入れてたんだろうな。こんな手紙全然気付かなかった。
それを嫁に見せたら、顔真っ赤にして「見つけるの遅いわ!15年も待たせんな、バカ!!」ってチョップされた。
やっぱ俺、バカガキだったわ。